クラシック音楽の中でも室内楽はあまり目立たないジャンルなので少し語ってみたいと思いました。。一般的な聴衆には少し敷居が高いと思われているふしもあるかもしれません。室内楽と呼ばれるのは通常は二重奏~五重奏くらいまでを指すことが多いですが、一番多いのはやはり二人で演奏する二重奏でしょう。弦楽器か管楽器のソロ一人とピアノという組み合わせがポピュラーですが、この場合はソリストが(楽器としても)目立つ場合は人気が出ることもあります。
先日演奏されたカプースチンのヴァイオリンやチェロのソナタはもはや名曲と言っても良いと思いますが、室内楽にはなかなか「名曲」と呼べるものが少ないとは言えるかもしれません。シューベルトの『鱒』などは名前は有名ですね。(ただしこれは五重奏曲。)
いわゆるクラシックの「名曲」にはオーケストラで演奏される曲が多いように見受けます。あと意外にピアノ作品にも多いです。でも室内楽作品には少なく、玄人好みというか地味に思えるような曲が多いという印象を持つ人もいるかもしれません。
ところが、実際にはクラシックの室内楽作品にはすごいと言える部分もあります。音楽を勉強する人にとってはものすごく重要で、何と言ってもアンサンブルはすべての演奏家にとって基本中の基本です。コンチェルトを弾く機会がなくても室内楽ならあらゆる可能性があります。そして、室内楽でしか学べない音楽的な要素、経験できることがたくさんあると感じます。音楽的な意味では、繊細な表現力やバランス感覚、呼吸感、それにソロ以上の音楽的充実感があります。中にはコンチェルトと同じくらい大規模な内容を持っている曲もあります。また、特にロマン派以降の作曲家にはやはり傑作と言われる曲もたくさんあるし、その作曲家の真髄というか真骨頂が室内楽の作品にこそ現れている、と感じることも多いです。
私個人的には、まず外せない作曲家としてシューマンやブラームスの室内楽作品は本当に素晴らしいと思います。何でも良いのでぜひ聴いてみてください。これはピアノ曲からは知り得ない世界です。またフランスやロシアなどの近現代作曲家にも傑作がたくさんあります。
私が教える音大では、以前よりもピアノ科の学生が室内楽を勉強できる環境が整ってきました。これからますます充実していくと良いと思っていますが、積極的な学生は自分からどんどん他楽器の人たちと一緒に演奏する機会を見つけています。一般的にピアノをやっていると「伴奏」をすることも多いと思いますが、この伴奏の中には室内楽と大いに関係している部分があります。大事なスキルや感性を磨くために軽視できない分野だと思います。音楽を勉強している子供たちには、早い内から室内楽を経験できるような環境ができてくると良いなと思っています。