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2台のピアノと打楽器のための協奏曲


カプースチンの『2台のピアノと打楽器のための協奏曲 op.104』(2002年作曲)という作品があります。この曲のタイトルを見て、ピアノ奏者だったらまず思い浮かぶのはバルトークの『2台のピアノと打楽器のためのソナタ』だと思います。私も大学時代に弾きました。

カプースチンのこの作品ですが、演奏するにはピアノ2人に加えて打楽器奏者2人が必要であること、そしてこういう曲は一見難解な曲であることも多いので(バルトークもそう)、なかなか簡単には手が出せなさそうです。実際この曲は、ピアノ協奏曲第4番も初演したリュドミル・アンゲロフがダニエル・デル・ピノと2009年に録音したCDがおそらく最初で、その後2013年に日本の紀尾井ホールで打楽器の岩見玲奈さん主導企画のコンサートでピアノを森浩司さんと石井理恵さんが演奏したのが日本初演だったと思います。これは私が『ピアノ協奏曲第6番』を世界初演したコンサートと同一のステージで行われたものです。

実はこの日の『2台ピアノと打楽器の協奏曲』の録音をその後カプースチン本人にも送ったのですが、カプースチンは彼らの演奏を絶賛していました。私も当日にリハーサルなどで聴いていて、特にあの第2楽章の高速の部分は一体何なのだ??(笑)と思った記憶がありますが、この日の演奏は本当に素晴らしかったのを覚えています。センセーショナルな演奏だったと言って良いと思います。

それからこの作品はゆるやかに世界のあちこちで演奏されるようになってきました。
新しいところでは3年前にCD録音されたばかりのフランク・デュプレとアドリアン・ブレンドレのピアノによるものがあります。この演奏は本当に素晴らしく、演奏したい人は模範とするべき音源と言って良いでしょう。何といってもF. デュプレはピアノだけでなく自らがドラマーでもあるということが大きなアドバンテージでしょう。ビートをあれだけ強固に守りながら楽節やフレーズ感、そしてメロディや構成をあれほどクリアに聴かせられる演奏はなかなかできるものではないのではないと思います。

デュプレと1年半前にドイツで会った時に、その曲の話題も出たのですが、私が特にあの第2楽章の高速部分について言及した時に、デュプレはすぐに反応して空中で弾き真似をしてくれたのが楽しかったです。「ドッペル・コンチェルト(ドイツ人はこの曲をこう言う)一緒にやろうよ!」などと私をけしかけてくれたりするのは嬉しいのですが、ハードな曲であることは間違いないです。第1,第3楽章もそれぞれ素晴らしいのですが、第2楽章のあの中間部分はやや特徴的というか、他の曲にはあまり見られないのではないでしょうか。似たような例としては、カプースチン自身が『ピアノソナタ第16番』のCD録音時に(私はその場に居合わせていたのですが)、本来は緩徐楽章であることが多い第2楽章の中間部にものすごいテンポの速い箇所があって、それを弾いているのを見て度肝を抜かれたのを覚えています。おそらく当時カプースチンは70歳を超えていたはずです。あのドライブ感は一体何なのか?? ピアノソナタの中でそのような発想があることの斬新さに私は驚愕しましたし、すぐにはその意図が理解できなかったことを思い出します。何かが突き抜けているのだろうな、としか思えませんでした。

さて無意味なことを書き連ねてきましたが、来たる3月16日に洗足学園音大でカプースチンの上の曲を含むコンサートがあります。そして上で言及したバルトークの曲も演奏されます。出演者情報その他もありますのでチラシを貼っておきます。

カプースチンのOp.104の2人のピアノは原田千明さんと安藤真伊さんです。原田さんは数年前からカプースチンの魅力に取り憑かれてオール・カプースチンのコンサートを自主企画して弾きまくったり、つい先日はピアノ協奏曲第4番も演奏するなど積極的なカプースチン活動を開始しています。もちろん「カプースチン祭り」にも出演してくださっています。
ただ今回のこの洗足学園シルバーマウンテンでのコンサートはもう満席の売れ行きとなっているようで、聴きたかった人にとってはすでに残念なこととなりました。ぜひまたもっと多くの人が聴ける会場でやってほしいです。

安藤さんと原田さん

デュプレを日本に呼びたいな~

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