つい先日までクローズドのコンサート本番などがいくつかありましたが、ようやく少しホッと一息つきました。今年はまだまだソロを弾くイベントが断続的に続きそうです。
気がつくと学校の卒業式も終わりましたね。そろそろ桜が満開になる季節ですが、この春休み中になんとか大学の今年度の卒業生たちと会って話ができる機会を作ることができたので今はそれを楽しみにしているところです。
そして新学期は我が大学では4月1日に入学式があって、すぐに学生たちも(先生方も)突然忙しい毎日が始まることでしょう。
ピアノの学生は年々増える勢いでそれはとても嬉しいことですが、学生の立場から言えば、しっかりキャリアを作って将来の仕事に繋げていくために、やはり早いうちから意識しておくほうが良いこともあるでしょう。ピアノの上達はもちろん一番大事かと思いますが、やはり自分と人との差別化というか、自分にしかない資質や適性というものを早いうちに見出して、それを伸ばしていくための戦略を立てるのも大事だと思います。コンクールなんかを受けるとどうしてもある部分で人と比較されるのは仕方ないことですが、それでも自分の良さを伸ばしていく、というか、自分の信じる美点を自分の中で育てていくという視点が常に大事で、自分に特有の個性や感性に一つでも多く気がついて、それを磨いていくということですね。
音大ではおもにクラシック音楽の勉強がメインです。クラシックのレパートリーは膨大ですが、最終的にはその中から自分に合っていると思う対象を中心に磨きをかけていくのが筋だと思いますが、同時にクラシック音楽の全体像を勉強していろいろ知っていることも大事だし、さまざまなタイプの作曲家の作品に実際に触れること(音楽を知ること、自分で演奏してみること)も必要だと思います。でも、ただそれだけを究めようと思っても何年あっても足りませんし、またそれだけで仕事につながるという訳でもありません。また4年や6年くらいでクラシックのピアノ作品のすべてを制覇することも無理なのです。
とは言え私が今思うのは、そうであってもクラシック以外の音楽ジャンルにも広く関心や興味を持って、それらとの接点を作るのも重要だということです。それは自分自身のアレンジの能力などにも関わってきます。簡単でも良いから自分のセンスと能力でアレンジ(編曲or演奏)できる才能もけっこう大事です。そのためには違った視点から音楽を眺められないといけないでしょう。
いろんなジャンル同士でさらにクロスオーバーしていく可能性は今の時代は多いと思います。20世紀頃にはもうこの先クラシック音楽に発展はないのではないか?などと言われたこともあったのですが、実際にはまだそうなっていません。今後作曲家はどんな曲を生み出していくのでしょうか。「交響曲」や「ソナタ」というものがはたしてこの先もまだ作曲されていくのか??などという疑問もありましたが、少なくともカプースチンはつい最近までソナタを書いていました。しかもピアノソナタは20曲も書いています。それは現代作曲家としては珍しいほうかもしれないのですが、でもそのカプースチンであってもジャズやそれ以外の音楽ジャンルの要素をたくさん取り入れているという事実があります。なので、音楽は今後さらにそのような方向に向かっていくことは間違いないです。
先日、映画館での上映のほぼ最終日に近いタイミングでしたが、角野隼斗さんについて取材されたドキュメンタリー映画を観に行きました。若い世代で活躍しているピアニストたちがどんな方向に向かっていくのか、これらも注目して未来のことを考えていかなければ現世代の音楽の卵たちを育てることができないのではないかと思っています。物事は常にマイナーチェンジというか、突然すべてがガラッと変わるのではなく、小さく部分的に更新されていくことが多いのですが、それにはっきり気がついた時にはもうかなり手遅れになっている、という感じになりますので、そうならないように注意しながら古き良きものを残しつつ新しいものを学び続けている最中です。
ようやく春らしくなってきたので、また新学期から新しい気持ちで音楽と取り組んでいこうと思っています。