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プロコフィエフ短編集

『プロコフィエフ短編集』(サブリナ・エレオノーラ/豊田菜穂子訳、群像社)
この本が最近になって刊行されました。

一度ブログでも紹介しましたが、これを翻訳したサブリナ・エレオノーラさんは、わが音大でロシア語を教えている先生でもあります。初めて私が彼女に出会ったのは、本当に偶然だったのですがモスクワからのアエロフロートの飛行機の中、座席でお隣になったのでした。初対面なのになぜか話が合ってしまい、なんと同じ大学で教えているということを知りました。その数日後に本当に大学構内でばったりお会いし、それからは私が企画したメトネルの作品の演奏会などでお世話になったり、よくお話をさせていただいています。
今回の翻訳は本当に素晴らしいお仕事です。

プロコフィエフは作曲家としてはすでに有名ですが、作家としての彼の顔を知っている人は数年前には誰もいなかったと思います。プロコフィエフの日記がまず英語で最近になって出版されましたが、この日本語訳の本には、彼の短編集に加えて日本滞在中の彼の日記が初めて公開される形になりました。その部分はページ数が少ないので、本の最後に「おまけ」のような形で載っているわけですが、それにしてはあまりにも貴重な文献だと思います。

初めて公開された彼の短編集と日本滞在中の日記。
この二つがどう繫がるのかというと、どちらも日本語では初めての貴重な情報であるということ以外に、これらの短編は彼が1918年にロシアを出てアメリカへ行く途中、まさに日本滞在中に着想されたものや書かれたもの、その前後3年間くらいの間に出来上がったものなのです。

短編小説を読むとプロコフィエフの頭の中が透けて見えるようで、いろいろなことが想像できてとても楽しかったです。この本は、彼の音楽をよりよく理解する助けになることでしょう。過去の作曲家のことでも、知っているようでまだまだ研究途上のことってたくさんあるのですよね。芸術の真価というものも、きっと時代が下っていくにつれて徐々に正しく理解されていくのでしょう。

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