先々週10月23日(土)に放送されたNHKの番組『マヨルカの啓示』では、辻井伸行くんがマヨルカ島へ行き、ショパンが滞在していたところを訪ねてそこで演奏するという企画でしたが、これは番組で計画していた以上の奇跡をもたらしたように私には見えました。
当初、この番組の制作会社は私のところへも企画の相談にいらしたりしていたのですが、結果的に良い番組に仕上がっていました。ヴァルデモーサの修道院の中のショパンの住んでいた一室に一晩彼は泊まって、本当にショパンと対話をしたのではないかと思える番組でした。彼があんなに涙を流していたのは初めて見たし、ショパンに対する感謝の気持ちが最後の深々と三度のお辞儀したことでもわかります。しかも最後に弾いたあの「雨だれのプレリュード」の心が洗われるような演奏。番組中で辻井くんは、ショパンが修道院跡に住む前に滞在した通称「風の家」でも即興演奏をしましたが、それも視聴者には好評だったようです。
そして昨夜、東京はサントリーホールでのリサイタル。
私は仕事を早めに切り上げて久しぶりに彼の演奏会に駆けつけました。
なんと皇太子様もご臨席されての満場の聴衆を前にしてのコンサート。アメリカツアーから5日前に帰って来たばかりですが、すぐに始まった札幌公演を皮切りにしての全国ツアー。彼は本当に国民的なピアニストに育ってしまったのですよね。
CDで出していた「展覧会の絵」を含むプログラムの昨日の演奏はとても良かったですし、アンコールには、先日テレビで演奏した自作の『風の家』(即興曲)と『雨だれのプレリュード』。『風の家』は、テレビで弾いていた演奏よりはるかに規模の大きな作品に変貌していました。作曲が細かいところまで手が込んでいる感じがあって、これも今までの彼の自作品には見られなかったものです。作曲家としての成長を少し見ることができたのは嬉しいサプライズでした。聴衆の皆さんも大満足でしたね。
昨日のサントリーホールでのリサイタルは、テレビで放送されることが決まりました。
日時は2011年1月1日(元日)21:00からBS朝日で2時間。
昨日の会場でコンサート終了後に番組プロデューサー氏と話しましたが、番組では演奏の一部がカットされることが多いのですが、今回はアンコール曲までノーカットで放送されるとのことです。ぜひ皆さん御覧ください。