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ペルージャ音楽祭にて(4)

世界中から集まった音楽家の卵たちはかなりバラエティに富んでいます。
特にピアノの参加者のレベルは高く、例えば10歳のマドレーヌちゃんはベートーヴェンのコンチェルトを弾き、あまりにも喝采されてアンコールでスカルラッティのヴィルトゥオーゾ・ソナタを軽く弾いたりするし、他の人たちのレパートリーもおしなべて難易度が高いです。

期待していた生徒の一人、カプースチンのエチュードOp.40-3を持ってきた中国系でカナダから来た13歳のTristan Teo君のレッスンもしました。彼は日本版でない楽譜を使っていましたが、すごいテクニックでほぼ完璧に弾いていました。彼のレパートリーは、ほかにガーシュインのラプソディー・イン・ブルーやプロコフィエフのトッカータなど。13歳です。

コロンビアから来たMauricio Arias君は、年齢はもう少し上ですが、レッスンではファリャのファンタジア・ベティカを魅力的に聞かせてくれたのも良かったのですが、自身が作曲も手がけていて、ピアノとトランペットのためのコンチェルトをちょうど書き上げたから聴いてほしいなどと言ってきました。そして翌日、ちょっと時間が空いたときに弾いてくれましたが、現代音楽家のリゲティやラテン音楽の要素も入っているというその音楽はなかなか興味深いものでした。スコアも見せてくれましたが、作品はほぼ完成していました。とてつもない能力を持っている若者がいるものです。

ほかにも、ピアニストの能力としては、10歳あるいは13歳などの年齢で日本では考えられないほどのテクニックと音楽性の成熟さを見せてくれる若者がたくさん集まっています。
参加者の出身国は実際には25カ国どころではありませんでした。言語も10ヶ国語は飛び交っています。

ところで、これだけさまざまな国の人が集まってコミュニケーションはどうしているのか、不思議に思う人もいるでしょう。一体、何語でみんな会話をしているのか。

その答えは、たとえ何十ヶ国から参加者が来ても、このような場合には英語が話されるのです。逆に言えば、英語さえちゃんと話せればどこでも通用するということです。
レッスンは基本的に英語ですが、例えばロシア人の先生がロシア人に教える時は一時的にロシア語を使ったりすることもあります。ほかにも例外はあります。Professorは母国語以外に数ヶ国語を使えることが多いので、生徒によっては英語に限界があって、他の言語でレッスンがなされる場合もあります。ただ、マスタークラス(公開レッスン)は基本的に英語でなされることが求められます。

昨日のコロンビアの男の子は、私のプロフィールを見て、レッスンの時にドイツ語を喋ってきました。こちらも驚きましたが、そういうやりとりもなかなか楽しいものです。彼は英語もドイツ語もどちらも同じくらい理解できるというので、すごいなと思いました。彼の母国語はスペイン語ですから。そんなふうに、数ヶ国語ができると、人によって使い分けて、言葉によって特別の感情を込めることができるので、さらに一人ひとりに対しての親密感が出てくるものです。

私自身は、このような場でオフィシャルに3ヶ国語を使える(英語、ドイツ語、日本語)としており、アンオフィシャルには5ヶ国語(+フランス語、ロシア語)を使って仕事をしていますが、まだまだ勉強不足であることを痛感しています。特にヨーロッパには、4~5ヶ国語を本当に見事に使いこなす人がいます。日本人は欧米の文化からずっと遠く離れていますし、まだまだ歴史的にも遅れをとっていると思いますが、これを少しずつ埋めていかなくてはいけないでしょう。

日本人の生徒たちは、実際に英語もままならないので、ちょっとだけ恥ずかしい気持ちはあります。他の国から来た人たちと比べると、外国の先生にはやはり日本人の生徒が一番英語が通じにくいという感じがすると思います。これはそろそろなんとかしたいものですね。
今の中学生、高校生たちに言いたいと思いますが、英語がちゃんとできるだけでも本当に大きな道が開けると思うので、ものすごく本気で外国語を勉強してください。できれば命懸けで。継続は大変ですが、必ず元がとれることを保証したいと思います。
私自身、実は語学の勉強(計7ヶ国語)に何百時間も何千時間もかけました。そんなにやったのに、もう全然ダメだなと落ち込むことが何度もありました。でも今となっては、やっぱりやっておいて本当に良かったと感じています。

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