今日はクラシック音楽の価値について、少し真面目なことを考えていました。
実は今朝、起きる前に頭の中でなぜかベートーヴェンのピアノ協奏曲『皇帝』がずーっと鳴り響いていて、もう聴き飽きているほどの曲なのに「それにしてもよく出来た曲だ!名曲だな~」などとあらためて考えていました。しかも、ジャズなどもなかった時代、使われている音楽語法はスケールや、三和音・減七和音のアルペジオやオクターヴくらいしかありません。それでこれほどすごい曲ができるとは。
「人類が100年聴き続けても飽きない曲」というのは確かにあるし、そういう作品を残した人がいわゆる大作曲家なのだとも思うし、それをクラシック音楽とも言うと思うのだけど、あらためてすごいことだと思いました。そして実際には200年かそれ以上も残っている名曲というのがあります。
ところで、ピアノ音楽にとてつもない功績を残した作曲家とは誰だろう?と考えてみたのですが、私の中ではほぼ以下の数名に集約されました。もちろん大作曲家はたくさんいるし、人によって好き嫌いもあるでしょうが、いくつかの観点から特にピアノに貢献した巨大すぎる存在(作曲家)を挙げるとしたら、もう圧倒的に以下の8人が断トツです。
・モーツァルト
・ベートーヴェン
・ショパン
・シューマン
・ドビュッシー
・ラヴェル
・ラフマニノフ
・プロコフィエフ
選んだ条件は、
① ピアノ曲やピアノ協奏曲に重要な作品があること
② 100年聴いても飽きない名作を多数作曲したこと
③ 専門家ばかりでなく大衆レベルで普通に知られている名曲が何曲も存在すること
モーツァルトの18曲のピアノソナタは、ピアノ音楽史ではかなり初期に位置しますので、その後のあらゆる音楽を経験してきた現代人にはいくらか物足りないものもあるかもしれません。しかしどれも完成された作品としての価値はあります。特筆すべきは、やはりあのピアノ協奏曲の傑作群です。これらの曲のクオリティは半端ではありません。今でも多くの人に限りない感動を与えてくれます。
ベートーヴェンは誰もが認める大作曲家でしょう。交響曲に『運命』や『田園』『第九』など名作がゴロゴロ存在するのは周知ですが、自らがピアニストでもあったこともあり、32曲のピアノソナタの存在が巨大すぎるし、5曲のピアノ協奏曲が素晴らしすぎます。ピアノが入った室内楽作品も山のようにあって、名作が尽きないと言えます。
ロマン派ではやはりまずショパンが最初に来ますが、ショパンはピアノのための作品ばかり書いた作曲家ですが、その割に名曲が多いと思います。そして誰でも知っているであろう作品が多く存在します。また2曲のピアノ協奏曲をはじめとする協奏作品も素晴らしいし、とにかくピアノ書法をあれだけ革新的に発展させた功績を思えばピアノ界ではやはり第一人者と言えます。
それからシューマンですが、もううっとりするようなピアノ曲や歌曲が多すぎて、どこから見ても本物のロマンティストです。ロマン派の音楽の素晴らしさというものを感じさせる作曲家です。ピアノ協奏曲も名曲で特にピアニストにとっては大人気で、ピアノ音楽というものがこれほど美しいかとつくづく感じられる要素がたくさん入っています。
次のドビュッシーですが、なぜここにドビュッシーが入るかと言うと、やはり彼がピアノ音楽に新たな世界を切り開いた功績はあまりに大きいと思うからです。それに、ドビュッシーにはピアニストというイメージはあまり持たない人も多いでしょうが、ピアノ曲に珠玉の作品が多いのです。小品のみならず『プレリュード集』や『12のエチュード』など重要な作品があります。
ラヴェルも作品数はそれほど多くはないものの、個性的なピアノ曲をたくさん作曲し、どれもが力作です。斬新な音の使い方や新たなテクニックもふんだんに使われていて、やはりピアノ界にとって大きな存在です。2曲の重要なピアノ協奏曲もありますし、ピアノ作品の新たな世界を作り出したことは間違いないです。
ラフマニノフは、特にオーケストラ&ピアノで演奏する作品が有名で、ピアノ協奏曲第2番、第3番やパガニーニ狂詩曲が存在するのでやはりここに加えたい作曲家です。もちろん彼自身がピアニストとしても重要な活躍をしていましたから、多くのピアノ曲や歌曲も生み出しました。練習曲『音の絵』などピアノを弾く人には勉強すべきものがたくさんあります。
そしてプロコフィエフ。90年代頃までは弾き手がかなり限られていたと思いますが、今や5曲のピアノ協奏曲はどこでも聴かれるようになりました。ピアノソナタ群やピアノ小品、組曲の類も多く、やはり新たな境地を開いた現代作曲家として外せない価値を持っていると思います。交響曲やオペラにも素晴らしい作品を残していて、まだ発掘されていない部分もあるでしょう。
上の8名に入れなかった作曲家でピアノに貢献した重要な作曲家はまだ何人もいます。
例えばJ.S.バッハももちろん大作曲家ですが、時代がもう少し前になり、ピアノ(フォルテピアノ)という楽器がまだほぼ存在していなかったため入れていません。また、リストなどもピアノに多大な貢献をしていますが、一般大衆が知っている名作がそれほど多いわけではありません。他の作曲家についても同様です。
クラシックピアノを本格的に勉強する人は、なんとしても上の8人の作曲家の作品には少なくとも触れておきたいものです。(奇しくも古典派×2人、ロマン派×2人、フランス×2人、ロシア×2人という割合!)
もしこの現代に、この8人の作曲家に匹敵する天才音楽家が現れたら、そしてその人がもしピアノという楽器を愛したなら一体どんな形の作品を生み出すだろうか?
おそらくピアノという楽器自体は今から100年後も200年後も残っていると思います。例えば、ピアノ協奏曲のようなジャンルは今後どうなっていくのだろうか? そういった作品が今後も続けて生み出され続けていくのだろうか? もちろんカプースチンのような作曲家もいます(これについては後編で少し語りたいと思います)が、これからのピアノ音楽の行方はどうなっていくのだろうか。100年後まで残る作品というのは、現代ではどういう形として生み出された作品となって結実していく可能性があるのだろうか?
続きは後編で書きたいと思います。