メトネルとはニコライ・メトネル、作曲家のことです。
今、静岡県のヤマハの「つま恋」というリゾート施設にてピアノアカデミーの最中です。今日でもう4日目。この施設は非常に大きく、私たちがピアノのセミナーをやる音楽棟もあるのですがそれはほんの一角で、広い敷地にさまざまなスポーツ施設があります。全国のいろんなところからスポーツ合宿の小学生や中学生たちもたくさん来ているので、朝食を食べるレストランではそのような団体たちに圧倒されています。
ここに今回、数えてみたらもう私はこれで5回目参加となるドリアード・ピアノアカデミーの講師の一人として来ています。すでに25人以上のレッスンをしました。まだまだ続きます。このセミナーに参加する生徒は小学生から大学生以上まで、その中にはすでに大きなコンクールで入賞して有名人となっている人たちもいます。
私は初日のレッスン終了後の時間にレクチャーコンサートを依頼されたので、さて今回は何を弾こうかなと思ったのですが、他の講師のレパートリーと重ならないものといえば…ということで、メトネルの作品を紹介することにしました。実はトークを含めてほとんど即興でしたが、演奏したのは作品38の『忘れられた調べ 第1集』からNo.5、No.6、No.3の3曲。おまけで、カプースチンの連弾曲の「シンフォニエッタ」も最後に演奏しました。
メトネルのピアノ曲は、今年の東京音大のピアノ科卒業試験でも数人が弾くほど普及していますが、もうメトネル没後60年以上経つのに、未だにピアノの世界では一部でメジャーな作曲家としての認識がされていないことを感じます。私のコンサートを聴き終えた後、モーツァルテウム音楽院から来たPlagge教授は、私のトークが日本語で分からなかったため、3曲聴いても「何という作曲家の作品だっけ?」ということでした。(笑)
彼はもうモーツァルテウム音楽院で21年も教えているベテランの先生ですが、少なくともモーツァルテウムでは誰一人メトネルを弾いた人はこれまでいなかったということでしょう。オーストリアは比較的保守的だと思っていましたが、現状は本当にそういうことで少しビックリしました。「本場のクラシック」という感じですね。勉強不足というのとは少し違う感じがします。あちらでは、ある種のレパートリーに関しては、これ以上ないというくらい権威を持って教えているのも事実なので、専門性の高いピアノのクラシックの世界であっても、同じ時代なのに場所によってかなり様相は異なる気がします。
私が昨年行ったイタリアのマスタークラスセミナーで、たまたま私がレッスンした生徒が二人もメトネルのソナタを持ってきたことを考えても不思議な感じがしました。(そのレッスン生の一人はスイス在住ロシア人、もう一人はロシア在住中国人でしたが。)
オーストリアやドイツでは、現在でも「クラシック色」が強いのは確かでしょう。これがフランス、アメリカとなってくると感じがだいぶ変わってきます。なので、留学先はやはり自分の求める方向により近いものを選ぶ必要はありそうですね。
それにしても、たくさんの人が集まるこのようなピアノの勉強の場は刺激があってとても楽しいですね。皆おしゃべりになります(^^)