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角野隼斗リサイタルを聴いて~追記


一昨日の角野さんのコンサートinサントリーホールの感想の続きです。
とにかく彼のステージにはオリジナリティあふれる「仕掛け」がいくつも散りばめられていたのですが、ステージに設置された4本の客席のほうを向いた光源の強めのライトのオン・オフを使って、今演奏しているカプースチンのエチュードとバッハのシンフォニアの番号を二進法によって示すという面白い試みをしていました。プログラムには曲目の箇所に意味深なヒントのようなものが示されてはいたのですが、数学が好きな人ならひょっとしたら事前にこの謎解きができたのかもしれません。

そういう発想も面白いと思ったのですが、実はカプースチン自身が数学や物理が好きだったのです。彼の息子さんのアントン・カプースチンは有名な物理学者・理論家でもあります。角野さんが今回のツアーで演奏している自作曲の中に「Human Universe」という曲がありましたが、本人のプログラム解説によると「(この曲は)宇宙は11次元で成り立っている、という『超ひも理論』からインスピレーションを受けて、曲の大部分が11拍子で構成されている」などと書いていて、ピンとくるものがありました。実は私の自著「カプースチン」の中で、息子のアントンさんのことを「超弦理論(=超ひも理論)など先駆的な研究を行なっている著名な物理学者」と紹介したことがあったのですが、そう書いたのには根拠がありました。息子さんは物理学者として世界的に有名な方ではあるのですが、「超ひも理論」という言葉はカプースチン自身から出てきた言葉だったのです。

あとで調べてみると2006年6月のメールのやり取りだったので、アントンさんがまだ34歳くらいだった頃の話ですが、その頃に「彼の主要テーマは『超ひも理論』なのです」とカプースチンが書いてきたのです。角野さんはこのことを知っていたのだろうか、それとも偶然なのか…。私は数学や物理にそれほど詳しくないのでその言葉を聴いたのはこのカプースチンからのメールが最初だったのですが、当時では「きっと最先端の物理学の理論の一つなのだろう」くらいにしか思っていませんでした。そしてその次にこの語に触れたのが一昨日の角野君のプログラムだったのでした。

まあ謎は謎ということにしておきましょう。
とにかくカプースチン自身も数学や物理学が大好きで、あえて言えば言語学も好きなのですが、角野君のステージを見ながらそんなことを思い出したりもしました。


さて、カプースチンは今またちょっとしたブームになっています。一昨日の角野さんの公演に続いて、来週3/8にはカプースチンの『8つの演奏会用エチュード』が演奏される「辻井伸行リサイタル」が同じサントリーホールでありますし、先日ブログでも紹介した紀平凱成(きひらかいる)君は、その3日後の3/11に札幌コンサートホール(Kitara大ホール)でやはりカプースチン・プログラムを含むリサイタルをします。ちなみにこの札幌のKitara大ホールでは、つい数日前に角野隼斗さんがツアーで演奏してきたばかりですし、なんと紀平君の公演の3日後(3/14)には「辻井伸行リサイタル」の公演も入っているという(!)なんだかもうすごい流れができていますね。この勢いのままに4月23日(日)の「カプースチン祭り2023」を迎えられると良いなと思っています。

先日のHayato Suminoコンサートツアーのプログラムですが、よく見るとすべてが同じ色ではなさそうなのです。左がブルー、右がグレー。どう見ても色が違うのです。これは何かの間違いなのか…、それともこれも角野君の仕掛けなのか…。

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