通常、ピアノで演奏される作品はバロック、古典、ロマン、近現代の4つに分類して考える人は多いかと思います。ただ、存在するピアノ作品の数としては圧倒的に「近現代」の作曲家によるものが多いと思うのですが(もちろんカプースチンなども含む)、ロマン派にはやはり傑作が多く、古典派の作品だってやはり重要、そしてバロックもクラシックのルーツを勉強するためには必要、ということで、レッスンの現場に現れるものはけっこう分散されているというか、どれも均等に近い形でレッスンされている先生が多いかもしれません。
でも私が現場で感じるのは、クラシックピアノのレッスンでは、やはり古典派からロマン派の作品を持って来る生徒さんが圧倒的に多いということです。「近現代」に分類される曲というのはやはり比較すると「難しい」と思われているのでしょうか…。
ちなみに、上の「四期」の分類についてですが、「近現代」というのは少し曖昧で、またスタイルも作曲家の出身地も、あと年代もとても幅広いのです。ここはもっと分類を細かくするべきかもしれませんし、他の言葉を使うほうが良い場合もあるでしょう。海外の音楽教育では、試験でもコンクールでも違った分類がされることがあります。例えばイギリスのABRSMの音楽検定試験では、ある曲を演奏されるのを聴いてその曲の特徴(テクスチュア、構造、アーティキュレーション、曲の性格、スタイルと時代など)をオーラル試験で答えなければいけないテストがあるのですが、四期の分類は、「近現代」の代わりに「20世紀の音楽」となっています。21世紀の音楽でさえすでに存在するわけですが、それが試験に出されることはありません。なので、ある曲を20世紀の音楽と判断した場合にそれらの共通の特徴を言うことが求められるので、何かしらどの曲の中にも20世紀の音楽が持つ要素に言及することができると考えられているわけです。曖昧な調性やリズム、あるいはジャズなどの影響によるものも含まれます。
ピアノ作品のレパートリーは今や膨大です。音大ではバロックや古典派に関してももちろん重要視します。それがなくなってしまったらクラシックの勉強になりません。ただ、今はもう21世紀に作曲された音楽もどんどん増え続けています。さらにクラシック以外の音楽にも面白いものがたくさん存在しますし、新しい音楽的要素もやはり生まれていますから、それらを完全に無視してやっていくわけにはいきません。子供たちは必ずしもクラシックだけに興味があってピアノを習っているわけではありませんので、「四期」の考え方だけでは指導に限界が出てきそうです。
まあピアノ教育もイノベーションが常に必要ということですね。
例えば古いものと新しいものを同時並列的に勉強させていくスタイルがあっても良いのではないか。アメリカだとクラシックのピアノ教材に普通にジャズのスタイルの曲が入っていたり、ロシアだとそれこそ近現代のロシア作曲家の珠玉の小品が子供の教材にふんだんに取り入れられていたりなどしています。ある意味で子供にも大人になされるのと同じように高度なものや芸術的なものを入れ込んであります。そういう考え方はどんどん取り入れていきたいものですね。