
[2006年1月11日](前半部分のみ)
「親愛なるマサヒロ!
年末年始の祝日は楽しく過ごしたよ。自分の孫(3歳6ヶ月)とも知り合いになれたし、今もまだその余韻に浸っているところだ。
ただ、そのお客さんたちが帰った1月7日に私は血圧がひどく上がってしまった(100以上も!)。それはまったくまだ良い方向に変わっていない。
ではあなたの9つの質問に順に答える。
(・・・以下省略・・・)」

[2006年1月19日](前半部分のみ)
「親愛なるマサヒロ!
私の体はまだ以前と変わらず具合が悪い。そこへきてさらに厳しい寒波がやってきた(夜は40度まで下がる!)。
ザルツブルグの興味深い話をありがとう。このイタリア人は私が日本と一番緊密で近しい関係を築いていることを知らないはずがあるだろうか。
さてそのソナタ13番だが、私には楽譜の該当箇所が見つからない・・・。(以下省略)」
この時期、カプースチンはお孫さんたちと一緒に2週間ほどを過ごしたようでした。「楽しかったけれど疲れた」(笑)というようなあたりでしょうか。
この2通のメールのそれぞれ前半部分を抜粋した理由は、自分の血圧が100以上も上がったというメールの次に、モスクワの気温がマイナス40度まで下がった(しかもどちらも同じカッコ付きで)と言ってくる感じが、なんか韻を踏んでいるような感じがあって面白かったからです。面白いというのは不謹慎というか、もちろんどちらも同情したいような内容ではあるわけなのですが、カプースチンはこのように真面目に書いているのか半分自虐的なユーモアを含んでいるのかがわからないところがあるのです。まあそれがカプースチンらしい性格でもあるのですが。
まあこんなふうに日常のことを最初に書いてから、本題の楽譜の校正のために私がした質問に答えてくれる、というようなやり取りが行われることが多かったです。彼はこのようにいつも余裕のあるメールを書いてくれていました。
ところで、上のザルツブルクの話というくだりは私自身がすっかり何のことを話したか忘れてしまいました。実は自分のメールの送信済みアイテムのデータを一度手がすべって完全に消去してしまったことがあり、その中にこちらからカプースチンに書いたメールがたくさん入っていたのです。なので、彼からのメールは受信トレイにすべて残っているのですが(バックアップも三重四重にかけてある!)、自分が書いたほうのメールはなくなってしまいました。そんなわけで記憶を頼りに書いているところですが、上の件については本当に思い出せません…。