昨日、岡山でのリサイタルを終えて帰ってきました。カプースチンなどという作曲家はおそらく聴いたこともない方が大半だったと思いますが、あれだけ大勢の方が集まってくださったことに本当に感謝の気持ちでいっぱいです。主催してくださった方の厚いおもてなしには感激しました。そしてホールも楽器もとても素晴らしかったです。
ここのところけっこう長い期間、カプースチンの練習にエネルギーを使ってきましたが、オール・カプースチン、特に大きなソナタを2曲含むプログラムはやっぱりきついなあ、というのが実感です。心身ともに完全に健康であって(当日だけではなく練習のための時期も)、しかも現在の自分の持っているエネルギーのすべてを傾け続けなくては満足のいくレヴェルになかなか到達しないというのですから、自分にとっても大変な試練でもありました。まだまだ若いつもりでいましたが、現実は厳しい。しかし実は一番大きな試練は、これらすべてのカプースチン・プログラムを「暗譜で弾く」ということだったのです。もしこれが暗譜で弾かなくて良いなら、自分の場合はおそらくエネルギーを5分の1ほどでやっていけたと思います。ピアノ音楽教育の傾向でもありますが、クラシック音楽の勉強ということで長くやっていると、どうしても楽譜に頼りすぎるため、能力のある人でも「譜読みは早いし、初見もすごい」というふうにはなっても、暗譜だけはどうしても苦手というのは共通の悩みでもあるのではないかと思います。
ここで大きな一区切りということで、一体カプースチンをこれまでに人前でどの曲を何回弾いたかを数えてみました。自分できちんとデータとして書いて記録しているのですが、ちょうど5年ほど前の紀尾井ホールでのリサイタルでアンコールに8つのエチュードから第2番「夢」を弾いた時から数えて、合計でのべ126曲を弾いていました。人前で演奏したと言っても楽譜を見て弾いたものは回数に入れていないので、純粋に暗譜で弾いたものだけを数えています。1曲を12回も弾いているものもありますが、この126という数字はなんと偶然にもカプースチンの現在の作品番号数と同じですから、やはり良い区切りの時かもしれませんね。この辺で少し頭を休めて「普通の生活」を再開したいと思っています。