暦の上では9月は「秋」ですから夏はあと数日で終わるはずです。(笑)
ところが実際は誰もそのようなことが信じられません。この暑さは一体いつまで続くのでしょうか。もう笑いたくなってしまいますが、昨日は私のいるところは36度まで上がりました。今日も暑いです。
さて、カプースチンに関するレクチャーなどが近々いくつか予定されているので、そのような機会が近づいてくると、私は必ず「カプースチンの対話」というYana Tyulkovaさんが著した本を全ページ読み直すことにしています。

おそらく全部を通して読むのは今回で4回目くらい? というのは、あまりにも内容が濃すぎて何回読んでも細かいところまでは全部覚えられないからです。ページ数は500ページ弱くらい。でもさすがに4回目になるとかなり細かい内容まで頭に入ってきました。
この本は2019年に出版されてすぐドイツのショット本社の出版の方からプレゼントされたものですが、この本でカプースチンの生い立ちから考え方、彼の幼少時から音楽院での勉強や経験や人との出会い、そしてその後ビッグバンドやクインテット、いくつかのオーケストラ等で活動していた状況、プライベートな出来事などすべてを知ることができます。

ちょうど今から10年前の2015年に私がモスクワのカプースチンを訪ねた際に、カプースチンはYanaさんのことを「友人」と紹介してくれて、アメリカに住んでいるジャズシンガーの彼女が現在自分の本を書いてくれている、と初めて伺い、その場(カプースチンの自宅)でCDをかけて彼女が歌っている音源を聴かせてくれました。カプースチンは私にそれを聴かせている間中、煙草をくゆらせながらリラックスしながら聴いていたのですが、私が「この音楽はまさに煙草の煙がとてもマッチしますね!」と言うと、いつになくカプースチンが満面の笑みを浮かべ嬉しそうにうなずいていたのを昨日のことのように思い出します。
その頃から彼女は本を書くためにカプースチンにインタビューを始めていて、私はその後いつになったらその本が完成するのかと首を長くして待っていたのですが、なんとそれから4年も経ってこんな立派なものが出来上がったのでした。その間、ある時Yanaさんがモスクワ郊外のダーチャにカプースチンを訪ねる際に、カプースチンがそのことを私に教えてくれて「Masahiroも来ないか?」と誘ってくれたのでしたが、その時期はどうしても行けず断ってしまったのですが、今思えばとても貴重な機会を逃したかもしれないと思っています。そういうことは今になると本当に悔やまれますね。
とにかくそのような本当に貴重な内容の著書を出版してくださって、彼女には本当に感謝しかありません。カプースチンから私へのメールなどもそうなのですが、この本も何度読んでも泣けてきます。というのは、カプースチンとの対話がそのまま載っているからです。対話部分は本の中のかなりのパーセンテージを占めていて、もちろんロシア語が英語に翻訳されている表現ではあるのですが、本人が喋っている感じが生々しくわかるのです。
もちろんこの本には伝記のように客観的な事実などもたくさん書かれていますが、もう貴重すぎる内容が多すぎて、これを知りたいと思う人はもうすべてを読むしかありません。ただ、さすがにカプースチン・ファンの人たちでもこの本を実際に読んだ人はまだ少ないでしょうから、カプースチン本人と直接会って何度もやり取りをした経験も含め、いろんな機会に私から少しずつでも紹介していくことができれば嬉しいと思っています。