カプースチンの次の新刊楽譜「ピアノ作品集1・2」が全音から8月末予定で出版されます。収録される曲目はすでに全音が発表しているようですが、今回も作曲者自身による監修です。すべての作品に作曲者による運指が書かれてあるので、これによってカプースチンのテクニック(手ぐせ)がいっそう明らかになりましたし、また短い曲目解説を書いていただいたことによって、彼の性格もいっそう手に取るように分かってくることでしょう。
なかでも、第2巻に入る「10のバガテル」op.59は、A-RAM社からも最近出版されたようで、このタイミングは偶然の一致でしょうが、そちらは自筆譜のリプリントと思われます。全音からの新版のためにはカプースチンは今年に入って新たに細かく何度も手を入れました。作曲者自身が訂正の必要を感じる箇所はすべて更新されたわけです。他の曲も同様で、例えば「夜明け」op.26などは楽譜が真っ赤に訂正(更新)が入ってきました。すでに録音されている作曲家自身の演奏と一致しない部分も多いわけで、さすがに今回は楽譜の解説に「校訂報告」を書き下ろし、すべての旧版または自筆譜との変更部分について書き出しました。これがけっこう編者にとっては大変な作業でしたが…。作曲した側からすれば、「夜明け」などはもう作曲されて30年近くも経っていますから(最初の版はピアノ・ソロ用ではない)、さすがに改訂したかったのでしょう。しかしそれに比べて、ほぼ同じ時期に作曲された「スウィート・イン・オールド・スタイル」op.28は今回ほとんど手を入れていませんから、この曲は最初からほぼ完成された姿で出来上がったということなのでしょうね。
とにかく、もうすぐ作曲者の意図が反映された素晴らしい楽譜が出ます。ご期待を!