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ショパンコンクール優勝者のブルース・リウ君について


Bruce Xiaoyu Liu君は中国系カナダ人ですが、ショパンコンクールの時のインタビューで彼が英語で喋っているのを自然に聞いていました。そして昨日Youtubeを観ていたら、たまたまブルース・リウ君が出演したフランス語の番組が飛び込んできたので興味を持って観ていたら(私はフランス語もわかるので)35分ほどのトークを全部聴いてしまいました。進行役の聞き手は中国人で2020年1月に放送されたものでしたが、まだコロナパンデミック前の収録で彼のことがいろいろわかる貴重な内容でした。

彼はパリで生まれてモントリオールで育ったということですが、もちろんフランス語はネイティブのように流暢です。小中学校から教育機関はほぼフランス語圏だったので、フランス語はほぼ母国語なのでしょう。実際に司会の女性があらためて彼に「あなたの母国語はどれなのでしょう??」と訊かれて、「いや、それが答えるのが難しいんですけど…フランス語と中国語かな?いや英語も入れて3つかな?」などと言っていましたので、少なくとも3か国語は普通に喋れるということでしょう。彼を見ているときわめて自然体ですが、かなり知的なのではないかと思いました。

驚いたのは、ピアノを始めたのは8歳ということで、これはプロのピアニストの平均的なものから言えば決して早いほうではないでしょう。しかも最初は55鍵盤しかない電子ピアノで弾いていたということです。ずっとその楽器で練習していて、やがて数年経って本物のアップライトピアノが与えられたということです。しかも本人は長らくピアノの道に進むかどうかもわからず、水泳の選手になるかピアニストになるか、いや今でもまだよくわからない…などというような感じで、とにかく小さい頃から本気でピアニストだけを目指してきたタイプの人でないことはわかります。それでも10代の時には次々にコンクールなどで賞を獲り始めて活躍を始めているので、もちろん音楽の才能や運動神経など大きく恵まれた特質を持っていたことは確かだと思います。

そのトーク番組の中で、背景におそらく彼が弾いていると思われるピアノ演奏の一部がずっと流れていたのですが、バッハやプロコフィエフのピアノ協奏曲第3番なども聴こえてきましたが、どうしても気になる旋律が聴こえてくる気がするのです。耳をもう少し注意深く傾けるとそれは…、なんとカプースチンの『変奏曲』ではないですか! その番組の最後のほうで彼がそのカプースチンを弾いている映像が少し流れましたので、それを観て私はさらに彼に強い親近感を持ってしまいました(笑)。今回のショパンコンクールでの彼のショパンの「ラ・チ・ダレム変奏曲」Op.2などにも非常に大きな感銘を受けて、ものすごい感性を持った素晴らしいピアニストがいるものだなとは思っていましたが、やはり彼のレパートリーはかなり広いのですね。

彼がそのカプースチンの『変奏曲』を弾いたのは18歳の時のようです。カナダで栄誉ある大きな賞を獲って、その時のガラコンサートでショパンとカプースチンなどを弾いて聴衆を沸かせたという記事も見つけました。その時以来、すでに彼は国際的に活躍を始めて、アメリカ大陸のみならず世界のいろいろな場所で演奏していたことがわかりました。

彼がモントリオールでダン・タイ・ソンの前に音楽院で習っていたリチャード・レイモンド先生によれば、周りがみんな彼のことをブルース・リーに似ているなどと言っているので、自身の中国名の冒頭に自分でBruceを加えたという話も紹介していました。ショパンコンクールの際にもポーランドのインタビュアーに「ブルース・リーと似ているとか言われていますが?」などと冗談半分で水を向けられた時も、彼はそのことを楽しんでいたように見えました。彼はスタミナもメンタルも並大抵ではないすごく強いものを持っていると感じますが、あの彼独特の自然体でリラックスした話し方や振る舞い、考え方などまた何とも言えない魅力を醸し出しています。幼少時から国際的で多文化の中で生きてきた彼の生い立ちにもとても興味を持ちました。今後も国際的ピアニストとしての彼の活躍にもずっと注目していきたいと思っています。

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