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College(カレッジ)という語について

「カレッジ」と聞くと、日本人の耳には「大学」を意味する語に聞こえるのが普通でしょう。逆に、日本語の「大学」には、英語ではUniversityとCollegeという語が思い当たることと思います。現に、私が長年務めている東京音楽大学も英語名はTokyo College of Musicを使ってきていると思います。私自身はこれについて少し思うところがあります。

以前も少しブログに書いたことがある(2017年4月)のですが、モスクワには「モスクワ音楽院付属~」という名を冠した日本の「高等学校」に当たる音楽学校が2つあります。一つはいわゆる中央音楽学校ですが、もう一つカプースチンが通っていたと言われているほうの学校は училище ウチリッシェという語を使っているので、中央音楽学校で使われているшколаシコラとは違う語を用いて表現するために「カレッジ(College)」を使って表現する人もいます。カプースチンに関するいくつかの論文でそのようになっていますが、もちろんそのような訳語も可能かもしれません。例えば、イギリスでは私立の高校にはCollegeという語を使っている学校もありますので、大学へ入る前の学校(=高等学校)としてこの語を使っても不自然に感じない国の人たちもいると思います。イギリスでは、さらにそのCollegeには日本の中学生に当たる年齢の生徒も通える(予備スクールのように)学校もありますから、「カレッジ」に通う生徒の年齢の対象はもっと若くなります。
ちなみに、フランス語にいたってはCollège(コレージュ)は、発音は違いますが「中学校」を意味しますので、どんどん訳がわからなくなります。(ちなみにフランス語で「高校」はLycée(リセ-)。)

そのように「College」という語は、国によっては中等教育を行なう学校を指す場合もあって、必ずしも「大学」を意味する言葉には聞こえないのです。アメリカ人であれば、Collegeは単科大学、専門学校を含めて「大学」に当たる学校を意味すると思ってくれる可能性は大ですが、上記のように他の意味もたくさん含むので、国際的にはかなり曖昧な語であると言えます。
だから、例えばもし私が何も予備知識がない外国人に自分のTokyo College of Musicの名刺を出しても、東京音楽大学を知らない人はこれがどの年齢の生徒を対象とした学校で、はたして音楽大学であるのかどうかさえわからないことがあります。

ちなみに、海外の音楽学校のことを日本語では「音楽院」と呼ぶことが多いわけですが、それは「Conservatoire」「Conservatory」を訳してそう呼んでいるわけです。あるいは、カタカナでそのまま「コンセルヴァトワール」と書きたくなる人もいると思います。いわゆる音楽大学とはシステムも歴史も認識も違うので、海外の人に日本の私立の「音楽大学」のイメージはなかなかわからないのではないかと思います。ちなみに、モスクワ音楽院なども英語(フランス語)のConservatoireに当たるロシア語の単語を用いていますので、やはり「音楽院」と呼んでいます。

大学は「University」ならわかりやすいのです。あるいはコンセルヴァトワールに準じる言い方があれば音楽大学としては国際的に通じやすいと思います。東京音楽大学も歴史が古いですし、現在のように大学院も博士課程も存在しなかった時代に英語名が決められたとは思うので仕方がない部分もあるとは思うのですが、できればUniversityの語を持つほうがわかりやすいですね…。
ちなみに首都圏の他の音大では、昭和音大は英語名にUniversityを使っているようです。東京藝大ももちろんそうですね。他の音大(「洗足」や「国立」など…)はCollegeを使っているところもあるようです。

東京音大も “Tokyo University of Music”ならカッコいいと思うのですが…。
まあ、私の独り言として聞いていただければと思っています。

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