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カプースチンからの手紙[第3回]


[2004年7月12日]

「~前文省略~ 
残念ながら(それとも幸福なことに?)ダーチャには電話もパソコンもないのでね。なので、家に戻って来てからお返事を書くことになるよ。それまでにあなたが私に質問したいことを全部考えておいてくれるというのは大変良い。でも私のほうも『プレリュード集』については考えておこうと思う。ひょっとしたら何か思いつくかもしれない。
基本的に私たちには1ヶ月の休みが必要だ。ちなみに私は休息は必要不可欠なものだと思っている。

友情を込めて
ニコライ・カプースチン」


上のメールを書いてすぐその日にもうカプースチンはダーチャ(夏の別荘)に出かけてしまいました。そして1ヶ月はモスクワの自宅に戻って来ないということで、本当に夏の間はこのように長い期間にわたって連絡が取れなくなるのです。この文明の時代にそんなことがあるのか、と思うわけですが、夏の休暇の時期には徹底して外部と遮断して家族水入らずの生活をするということだと思います。(ただそれから数年経つと、そんなカプースチンでもダーチャにパソコンを置いてメールをくれるようになるのですが…。)

ちょうどこの時期は全音から出版されることになる彼の初めての2冊の楽譜(『8つのエチュード』『24のプレリュード』)を編集中で、カプースチンにはそれぞれに解説を書いてもらえるようにお願いしていました。『プレリュード』から書くと約束してくれたものの、すぐにダーチャへ行ってしまうので少なくともそれから1ヶ月は解説原稿がもらえないわけですが、実はそのほかにも自筆譜の中で私が校正者として作曲家に直接訊きたい箇所が山ほどありました。上のメールでは、それについては後日質問をリスト化しておくということを伝えたわけです。実際に私から送った次のメールでは46個もの質問を彼に浴びせることになるのですが…。

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