一昨日のカプースチン・コンサートに来てくださった皆様、どうもありがとうございました。今回はプロデューサーの大久保さんをはじめ、演奏させていただく私にとって本当に多くの方々の協力を得ました。この場を借りて心よりお礼を申し上げます。
自分一人では考えもつかない発想がいろいろあったという点(当日のリハでやっと理解できてきた(^_^.))から言っても、このコンサートは大きな意味で「コラボレーション」だったのかもしれません。また、ジャズ・コラボ企画としてカプースチンの「ブルーボッサ・パラフレーズ」を取り上げたのも、結果的に大正解だったのではないかと思います。本来は超絶技巧のパラフレーズなのに、ビブラフォンとウッドベースとの共演ということもあり楽しみながら気楽に演奏できました。全体の印象としても、あれだけ手を加えてもオリジナルのカプースチン音楽の良さはたぶん失われてなかったと思います。
とはいえ、第2部のプログラムもあり、カプースチンを一度に何曲も弾くというのはピアニストにとってはやはり普通のことではなく、長丁場の中で(リハも含めて8時間以上)トークやらさまざまな演出も良かったのですが、本番演奏中に集中力が飛んでしまった“魔の瞬間”が思いもかけず長く続くという苦しみがありました。まったく修行不足というか自分の限界を知りましたが、しかし大いなる経験をしました。こういう企画は、おそらくオール・カプースチン2時間ソロくらいを当たり前にできる技量を身につけて10年くらい経ってからだともっとクオリティーの高いものができる気がします。
ツィメルマンは「私は、一つの曲を完璧に準備するのに10年を要します」と言っていますが、まったく彼らしい言葉ですが、しかし演奏家(クラシック音楽家)はそのくらい突き詰めることもやはり重要だと思います。どんなに能力のある人でも高い精度を目指せばそのくらいかかると思います。暗譜だって複雑で長い作品であれば本当の意味で安心するにはそのくらいかかります。でも、そうすると私もオール・カプースチンを人前でやるためにあと9年ほど待たなければいけない(笑)ことになりますから(そうした方が確かに演奏家としての自分を守ることにはなりますが)、どちらが良いのか…迷ってしまいます。しかし実際は迷う前にすでに多くの行動を取ってしまっていまして…、この性格は少し改めたほうが良いのかもしれません。とにかく、少しゆっくりと腰を落ち着ける時間がほしいところです。