前回の話の続きですが、そういうわけで今やCDを聴く層が減っていくという流れは止められないでしょうし、実際に若い人たちはもうCDプレーヤーの存在を知らない?!というような人も増えてきているとのことですから、演奏録音を残す媒体をどうするかということは大きな問題になってくるとも思うわけです。
これまでは、例えば若手演奏家がコンクールなどで入賞してキャリアを作っていき、その流れの中でCDデビューするということは大きな意味を持っていたと思います。ソロなら一人で60分以上の演奏がパッケージされた立派な商品を武器に持てたのですから。そして新進の演奏家なら自分のCDが、例えば「レコード芸術」誌で推薦盤に選ばれることも名誉だと感じていたことも間違いないでしょう。驚くなかれ、それほどの権威を誇っていた「レコ芸」も昨年ついに廃刊になってしまいました。その後ONLINEでは復活したという話ではありますが、このような流れも必然的な時代の流れと言えるのでしょう。
だからこれまではCDリリースをするということが一つの演奏家にとってはステイタスでもあったわけですが、もしそれがないとしたら新進気鋭の若手アーティストたちはどのように自分の演奏を世の中にアピールしていくべきか、あるいは自分の演奏を録音して残していくべきか。これから活躍していこうと思っている若手たちはこれを考えなければいけなくなりました。
「CDデビューに代わるものは何になると思う?」などという質問を私は若い世代に投げかけることがありますが、よく言われるのは、やはり配信であるとかYoutubeなど動画媒体でアピールすることでしょう。もちろん演奏を音としてだけ録音して残すこともできます。もう音楽はネットで聴かれる時代なので、その方向で実績を作っていくことが大事ということは皆さん思っているようです。でも例えば動画を作るのが苦手な人もいるでしょうし、動画の形態自体があまり好きではない人もいるでしょう。なので、それだけが普遍的な方法であると言えるのかはわかりません。また、動画の音源では先日も書いたように良いスピーカーで聴いてもらえる保証もありません。おそらく移動中にイヤホンで聴いたり、パソコンの前に座って視聴するにしてもスピーカーの性能にこだわりを持つ人は稀かもしれません。
もちろんCDをこれまで通りに聴くという人もいるでしょう。また今後もCD制作をずっとし続ける会社もあるでしょう。例えば辻井伸行がドイツ・グラモフォンと新たな契約をしたというのも昨年発表されたばかりの新しいニュースです。また有名アーティストならCDにいろんな付加価値をつけることもできるので、そのような形で売れ続けていくこともあるとは思います。
ただ、一般的な流れとしては今後新たなCD制作はどんどん減っていくかもしれません。だとすると、どのように録音をしてどのようにして人に聴いてもらうか。オーケストラの曲に限らず楽器の音の本当の美しさや深さを感じ取ってもらうには、やはり良い録音と良いスピーカーの存在が必要です。これまでCDで聴いていた音楽というものの価値がどの方向に移っていくのか、これを見極めなければいけませんし、若いアーティストたちは、自身の活動の仕方についてこれから起こるさらなる変化をよく見極めながら行動していく必要がありそうです。これまでとは違った新しい考え方を生み出す必要があるかもしれません。